岐阜県喘息・アレルギー系疾患対策事業連絡協議会



小児気管支喘息(急性発作の対応と薬物による長期管理)

岐阜県喘息・アレルギー系疾患対策事業連絡協議会

【小児気管支喘息の治療目標】
最終的には寛解・治癒を目指すが、日常の治療の目標は、
  • 1.症状のコントロール
    ・β2刺激薬の頓用が減少、または必要がない。
    ・昼夜を通じて症状がない。
  • 2.呼吸機能の正常化
    ・ピークフロー(PEF)やスパイログラムがほぼ正常で安定している。
    ・気道過敏性が改善し、運動や冷気などによる症状誘発がない。
  • 3.QOLの改善
    ・スポーツも含め日常生活を普通に行うことができる。
    ・治療に伴う副作用が見られない。
(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012より)

【急性発作の対応】
1.急性発作時の家庭での対応法の指導
(1)保護者や患児が発作の程度を評価できるように下記の項目の症状を参考に指導してください。
2歳から15歳の発作強度の評価
  症状 SpO2
小発作 咳嗽、喘鳴、軽度の陥没呼吸あり、睡眠など日常生活に障害なし ≧96%
中発作 喘鳴、呼気延長、陥没呼吸、明らかな呼吸困難、会話、睡眠、食事など日常生活に障害あり 92〜95%
大発作 肩呼吸、鼻翼呼吸、強度の呼吸困難、途切れがちな会話、チアノーゼ、苦悶様顔貌 ≦91%
呼吸不全 著明なチアノーゼ、意識レベルの低下、尿便失禁、呼吸停止 <91%

乳児(2歳未満)の発作強度の評価(乳児喘息は2歳未満を定義とする)
  症状 パルスオキシ
メーター
小発作 喘鳴、咳込みがある、軽い陥没呼吸を認めることがある、機嫌は少し悪くなる。 ≧96%
中発作 喘鳴、咳込みがある、陥没呼吸、呼気の延長がある、機嫌が悪く、ミルクの飲みが悪くなる、時に嘔吐する。 92〜95%
大発作
呼吸不全
シーソー呼吸、鼻翼呼吸がある、陥没呼吸、呼気の延長は強度、言葉は途切れがちとなる。
さらに症状が進行すると唇が蒼白で、苦悶様顔貌を示し、時に呻き声を上げる、冷汗をかく、呼吸困難が強く、暴れるときには発作は極めて重度。
≦91%

(2)管理中の患児に処方されている内容で、次の場合の指導法
a)発作時の頓用薬、あるいは追加薬が家庭に常備されていない場合
小発作であれば、しばらく観察しても改善が見られず、悪化傾向の場合には受診する。中発作以上であれば直ちに受診する。
b)頓用のβ2刺激薬の吸入薬、あるいは内服薬が家庭にある場合
小発作と中発作のときはβ2刺激薬の吸入、あるいは内服を行い、この治療に対する反応を見てから次の対処を決める。
治療に対する反応の評価は、咳込み、喘鳴、努力呼吸などの発作の変化を目安にする。
「喘息患者カードが交付されている場合は、カードに記載された発作止めの処置を指示に従って実施する」
「救急医療機関受診時にはカードを提示する」
2. 発作のために予定外受診となった患児が来院した場合
  • 1.バイタル(顔色、呼吸数、体温、SpO2などを)チェックで発作程度を評価し、診察の優先度を評価できるようスタッフにも教育する。以下の初期対応を実施する際、経皮酸素モニターは常備することが望ましい。
  • 2.喘息患者カードを持参した場合には、カードに記載された重症度、禁忌薬剤、投与されている長期管理薬等を参考にする。
  • 3.長期管理で治療ステップ3以上の治療を受けている患者の発作に対しては、1ランク上の治療を考慮する。発作を反復している症例では、発作の原因を検討し適切な生活指導を行い、長期管理薬の再検討を行い、場合によっては小児アレルギーの治療に習熟した医師に紹介する。
  • 4.β2刺激薬吸入は15〜30分後に効果判定し、20〜30分間隔で3回まで反復可能である。大発作以上では必要に応じ随時吸入する。
  • 5.吸入後の評価も患児の身体所見に加えてSpO2の測定が参考になる。吸入を反復しても93%を超えなければ、酸素投与の必要、ステロイドの投与等追加治療ステップを要し、2次病院へ紹介する(診療所での治療は中発作まで)。
  • 6.ステロイド薬は注射薬を30分程度かけて点滴静注するか、内服薬を経口投与する。乳児では基本的に入院して行う治療である。全身性ステロイド薬の安易な投与は推奨されない。その使用は、1ヶ月に3日程度、1年間に数回程度とする。これを超える場合は小児アレルギーに習熟した医師を紹介する。
    以下ステロイドの投与量を示す。
点滴静注
ヒドロコルチゾン5mg/kgを症状に応じて6〜12時間毎。またはプレドニゾロン初回1mg/kg。以後、0.5mg/kg、6〜12時間毎(2歳未満は0.5〜1mg/kg、6〜12時間毎)またはメチルプレドニゾロン1〜1.5mg/kgを4〜6時間毎(2歳未満は0.5〜1mg/kgを6〜12時間毎)30分程度かけて点滴静注する。
内服
プレドニゾロン0.5〜1mg/kg/日(分3)。プレドニゾロンの内服が困難な場合はベタメタゾンシロップあるいはデキサメタゾンエリキシル0.05mg(0.5ml)/kg/日(分2)
参考:アミノフィリン点滴静注(痙攣疾患を合併している児や乳児では推奨しない)
30分以上かける。3mg/kgで実施するのが無難(小児では今や外来治療としては医療事故防止の面から推奨しづらい)。アミノフィリンは過剰投与にならないように注意。
3. 入院治療の適応 (以下の場合は二次医療機関へ紹介する)
  • (1)大発作、呼吸不全の場合
  • (2)中発作の場合
     (a)乳児喘息では原則入院加療とする。
     (b)重篤な発作の既往がある場合。
     (c)2時間程度の外来治療で改善しない場合。
     (d)中発作が前日から持続し睡眠障害を伴った場合。
  • (3)以下の合併症が喘息に伴う場合
    肺炎、無気肺、縦隔気腫、気胸、皮下気腫など
【薬物による長期管理】
喘息の治療にあたり、患児の重症度を評価することはきわめて重要である。治療前の臨床症状とくに「見かけ上の重症度」にまどわされることなく、「真の重症度」に対応する治療を行い目標達成する。
見かけ上の重症度
(症状のみによる重症度)
治療ステップ
真の重症度
治療
ステップ1
治療
ステップ2
治療
ステップ3
治療
ステップ4
間欠型
・ 年に数回、季節性に咳嗽、軽度喘鳴が出現する。時に呼吸困難を伴うこともあるが、β2 刺激薬の頓用で短期間で症状は改善し、持続しない。
間欠型 軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
軽症持続型
・ 咳嗽、軽度喘鳴が1回/月以上、1回/週未満。時に呼吸困難を伴うが、持続は短く、日常生活が障害されることは少ない。
軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
中等症持続型
・ 咳嗽、軽度喘鳴が1回/週以上。毎日は持続しない。時に中・大発作となり日常生活や睡眠が障害されることがある。
中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型
重症持続型
・ 咳嗽、喘鳴が毎日持続する。週に1〜2回、中・大発作となり日常生活や睡眠が障害される。
重症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型
たとえば治療ステップ2で加療している患児が中等症持続型の症状を示していたら真の重症度は重症持続型と考え、治療を治療ステップ4にしないといけない。
(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012より)

小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン(6〜15 歳)
  治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4
基本治療 発作の強度に応じた薬物療法 吸入ステロイド薬
(低用量)*2
ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
吸入ステロイド薬
(中用量)*2
吸入ステロイド薬
(高用量)*2
以下の併用も可
・ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
・テオフィリン徐放製剤
・長時間作用性β2刺激薬の併用あるいはSFCへの変更
追加治療 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
テオフィリン徐放製剤(考慮) ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
テオフィリン徐放製剤
長時間作用性β2刺激薬の併用あるいはSFCへの変更
以下を考慮
・吸入ステロイド薬のさらなる増量あるいは高用量SFC
・経ロステロイド薬
DSCG:クロモグリク酸ナトリウム
SFC:サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル配合剤
(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012より一部改変)

小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン(2〜5歳)
  治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4
基本治療 発作の強度に応じた薬物療法 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
and/or
吸入ステロイド薬
(低用量)*2
吸入ステロイド薬
(中用量)*2
吸入ステロイド薬
(高用量)*2
以下の併用も可
・ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
・テオフィリン徐放製剤
・長時間作用性β2刺激薬の併用あるいはSFCへの変更
追加治療 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
  ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
長時間作用性β2刺激薬の追加あるいはSFCへの変更
テオフィリン徐放製剤(考慮)
以下を考慮
・吸入ステロイド薬のさらなる増量あるいは高用量SFC
・経ロステロイド薬
*1:その他の小児喘息に適応のある経口抗アレルギー薬(Th2サイトカイン阻害薬など)
*2:各吸入ステロイド薬の用量対比表(単位はμg/日)
  低用量 中用量 高用量
FP,BDP,CIC 〜100 〜200 〜400
BUD 〜200 〜400 〜800
BIS 〜250 〜500 〜1000
FP:フルチカゾン
BDP:ベクロメタゾン
CIC:シクレソニド
BUD:ブデソニド
BIS:ブデソニド吸入懸濁液
  • 1.長時間作用性β2刺激薬は症状がコントロールされたら中止することを基本とする。長時間作用性β2刺激薬ドライパウダ一定量吸入器(DPI)は自力吸入可能な5歳以上が適応となる。
  • 2.SFCへの変更に際してはその他の長時間作用性β2刺激薬は中止する。SFCと吸入ステロイド薬の併用は可能であるが、吸入ステロイド薬の総量は各ステップの吸入ステロイド薬の指定範囲内とする。SFCの適応は5歳以上である。
  • 3.治療ステップ3の治療でコントロール困難な場合は小児の喘息治療に精通した医師の下での治療が望ましい。
  • 4.治療ステップ4の追加治療として、さらに高用量の吸入ステロイド薬やSFC、経ロステロイド薬の隔日投与、長期入院療法などが考慮されるが、小児の喘息治療に精通した医師の指導管理がより必要である。
(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012より一部改変)

小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン(2歳未満)
  治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4
基本治療 発作の強度に応じた薬物療法 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
吸入ステロイド薬
(中用量)*2
吸入ステロイド薬
(高用量)*2
以下の併用も可
ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
追加治療 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
吸入ステロイド薬
(低用量)*2
ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
長時間作用性β2刺激薬(貼付薬あるいは経口薬)
長時間作用性β2刺激薬(貼付薬あるいは経口薬)
テオフィリン徐放製剤(考慮)(血中濃5〜10μg/mL)
DSCG:クロモグリク酸ナトリウム*1:その他の小児喘息に適応のある経口抗アレルギー薬(Th2 サイトカイン阻害薬など)
*2:各吸入ステロイド薬の用量対比表(単位はμg/日)
  低用量 中用量 高用量
FP,BDP,CIC 〜100 〜200 〜400
BIS 〜250 〜500 〜1000
FP:フルチカゾン
BDP:ベクロメタゾン
CIC:シクレソニド
BIS:ブデソニド吸入懸濁液
(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012より一部改変)

【喘息コントロール状態の評価】
長期管理を適切に継続するためにコントロール状態の評価を以下の表を用いて行い、ステップアップ、ステップダウン、維持の判断に用いる。
評価項目 コントロール状態
良好
(すべての項目が該当)
比較的良好 不良
(いずれかの項目が該当
軽微な症状 なし (≧1 回/月)<1 回/週 ≧1 回/週
明らかな喘息発作 なし なし ≧1 回/月
日常生活の制限 なし なし(あっても軽微) ≧1 回/月
β2刺激薬の使用 なし (≧1 回/月)<1 回/週 ≧1 回/週
  • 1.コントロール状態を最近 1 か月程度の期間で判定する。
  • 2.軽微な症状とは、運動や大笑い、啼泣の後や起床時に一過性に見られるがすぐに消失する咳や喘鳴、短時間で覚醒することのない夜間の咳き込みなど、見落とされがちな軽い症状を指す。
  • 3.明らかな喘息発作とは、咳き込みや喘鳴が昼夜にわたって持続あるいは反復し、呼吸困難を伴う定型的な喘息症状を指す。
  • 4.可能な限りピークフロー(PEF)やフローボリューム曲線を測定し、「良好」の判定には、PEFの日内変動が20%以内、あるいは自己最良値の80%以上、1秒量(FEV1)が予測値の 80%以上、β2刺激薬反応性が12%未満であることが望ましい。
  • 5.評価に際し、最近 1 年間の急性増悪による入院や全身性ステロイド薬投与などの重篤な発作、あるいは症状の季節性変動など、各患者固有の悪化因子(リスク)を考慮して治療方針決定の参考にする。
(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012より一部改変)

【コントロール状態による長期管理の進め方】
コントロールのフローチャート図

※1 コントロール状態の評価に際しては、服薬状況や吸入方法、環境整備などに関するアドヒアランスを確認し、必要ならば適宜、患者教育を行う。
※2 良好な状態が3か月以上安定していることが確認されるまで治療内容を維持する。
※3 比較的良好と判定される状態が 3 か月以上持続する場合は治療が不十分と判断しステップアップを検討する。
※4 患者教育(*1)による改善効果が期待できる場合には、治療内容をステップアップをせずに維持してもよい。
(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012より)

【喘息ガイドラインダウンロード】