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出演者 |
放送日 |
テーマ |
【内科】 |
戸谷内科 戸谷 理英子 |
11月4日 木曜日 |
新しい糖尿病の診断基準について |
新しい糖尿病の診断基準について
きたる11月14日は、世界糖尿病デーです。
2007年12月に国際連合が「糖尿病の全世界的脅威を認知する決議」を採択し、これを認定しました。日本ではこの日を含む一週間を全国糖尿病週間として、国連のイメージカラーであるブルーライトアップ事業をはじめとした糖尿病の啓発活動が行なわれています。岐阜県でも岐阜城・岐阜駅前・高山市・郡上八幡城・美濃市でブルーライトアップと県民セミナーを行います。このように11月は糖尿病ととても関連が深い月ですので、今回糖尿病について話をさせていただきます。
今年は、糖尿病について大きなトピックスがありました。
そのひとつが、糖尿病の診断基準が11年ぶりに改定されたことです。糖尿病の定義は、高い血糖値が常に持続している代謝異常で、それが確認されれば糖尿病と診断されます。皆さんは、健康診断を受ける機会があると思いますが、糖尿病に関する検査項目の中で、まず覚えていただきたいのは、血糖値とHbA1cの見方です。
糖代謝異常は、正常型・糖尿病型・境界型と区別判定します。早朝空腹時血糖値 110mg/dl未満、75gブドウ糖負荷試験2時間値140mg/dl未満を「正常型」といいますが、早朝空腹時血糖値の 100から110mg/dlは「正常高値」とし、要経過観察となっています。
一方、「糖尿病型」の判定は、
(1)早朝空腹時血糖126mg/dl以上
(2)75gブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dl以上
(3)随時血糖値200mg/dl以上
(4)HbA1c値が6.1%以上
のうちいずれかひとつが確認された場合です。
「正常型」にも「糖尿病型」にも入らない場合には、「境界型」と判定されます。
変更点の一つ目は、1回の検査で、血糖値とHbA1cが「糖尿病型」であれば、糖尿病と診断できるようになったことです。HbA1cをより積極的に診断に取り入れ、血糖と同時に検査することで、糖尿病を早期に診断し、早期介入ができるようになりました。
糖尿病の患者数は年々増え、今日本では、2210万人が糖尿病かその予備群といわれています。この人数は、この10年間に1000万人近く増加しており、今後もさらに増えることが懸念されますので、この増大を抑え、合併症を予防し、その進展を抑えるためにも 今回の診断基準変更による早期診断と早期介入はとても重要です。「糖尿病型」で、再検査では糖尿病型でない場合は、糖尿病疑いとして、定期に検査を受けることが勧められます。
2つ目の変更点は、HbA1cの診断基準が、それまでの6.5%から、6.1%に引き下げられたことです。HbA1cの分布の幅は広く、それ単独では糖尿病と診断をつけることはできませんが、「糖尿病型」である空腹時血糖126mg/dl、ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dlそれぞれに対応する値が6.1% であることが明らかになりました。また、糖尿病網膜症の発症率が6.1%以上で上昇することも、変更根拠のひとつです。
●健康診断や人間ドックの検査の結果、要精査となるHbA1cは何%からでしょう?
HbA1c は、糖尿病の治療の上ではコントロール状態を示す管理指標ですが、診断の上では、5.5%は、負荷試験を行なうと境界型から糖尿病型に該当する値です。ブドウ糖負荷試験を行なったアジア人の研究では、正常型のHbA1cの平均値は5.3%、2時間値のみが200以上で糖尿病型と判定された群では5.5%、境界型群では5.4%でした。また、負荷試験を行なわないと半数近くの糖尿病型が見過ごされています。
今回の診断基準改訂では、ブドウ糖負荷試験を積極的に推奨する群をまとめています。空腹時血糖110-125、随時血糖140-199、HbA1c5.6-6.0%の群は糖尿病の疑いが否定できないので、是非検査を受けていただきたいこと、また空腹時血糖100-109、HbA1c5.2-5.5%、で糖尿病の家族歴や、肥満、高血圧・高脂血症など動脈硬化症の危険因子を持つ人は将来糖尿病になる危険が高く、検査を受けることが望ましい群となります。
この検査では、血糖を調節するインスリンホルモンの分泌状態などがわかり、今後の治療に役立てることができます。それに応じて日常生活を修正することが大切です。
健診で要精査となった場合、是非ブドウ糖負荷試験を受けて早期診断を受けていただきたいと思います。
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