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【内科】 岡山内科・消化器科クリニック
岡山 安孝
2月10日
木曜日
健康診断で胆石があると言われたら その1
2月11日
金曜日
健康診断で胆石があると言われたら その2

健康診断で胆石があると言われたら その1

最近、私共の消化器内科に人間ドックや健康診断で、胆石を指摘され、受診される方が増えてきております。
今回はその胆石について、はなさせていただこうと思います。
Q1)それでは、まず、胆石とはどのような病気ですか。
胆石とは肝臓から分泌される消化液の一種である胆汁が石のように固まったものです。胆汁は肝臓で作られたのちに、胆管という管を通って肝臓から、最終的に十二指腸に流れます。この胆管の途中に胆嚢がぶら下がっていて、入ってきた胆汁を濃縮して濃くしたり、食事の刺激で収縮して、効率よく胆汁を十二指腸に送り出す働きをしています。
胆嚢の中にできた石を胆嚢結石、胆管の中にできた石を胆管結石と呼びますが、胆管結石は石のある場所により肝内結石と総胆管結石に分かれます。単に胆石と言った場合は、全体の8割を占める胆嚢結石を指す事が多く、また、痛みなどの症状を有する胆石を胆石症と呼びます。
Q2)胆石は大きさや数など様々なものがあるようですが、何か違いがあるのですか。
胆石をすりつぶしてその成分を研究すると、胆石はコレステロール成分が多いコレステロール胆石と、それ以外の成分からなる色素胆石の2つに分けられます。さらに、コレステロール胆石は純コレステロール石や混成石、混合石に、色素胆石はビリルビンカルシウム石や黒色石に細分類されます。
それぞれの分類ごとに胆石の形、大きさ、数、色などに特徴を認めますが、胆石の種類によって、症状が違ったり、予後が変わったりする事はほとんどないようです。よく質問されるのですが、経過を見ていて胆石が大きくなったり、数が増えたりすることを、病気が悪くなったのかと心配される方がみえます。お話したように、元々、色々なタイプの胆石があるので、数や大きさなどの石の変化だけでは、その後の治療方針にはほとんど影響しませんので、心配しないように説明しています。
Q3)どうして胆石ができるのでしょうか。
胆石の出来る原因は、胆石の種類によって違います。コレステロール胆石では胆汁中のコレステロール濃度が高すぎることや、胆嚢の収縮機能が低下していることなどが原因と考えられています。ビリルビンカルシウム石では胆汁への細菌の感染によって、胆汁に溶けにくいビリルビンカルシウムが胆汁から析出することが原因と言われています。胆石が出来やすい危険因子として、摂取カロリーの増加や、炭水化物・糖質・動物性脂肪の取りすぎ、運動不足、長時間の絶食などが報告されていますが不明な点も多いようです。
Q4)最近、日本では胆石が増加していると聞いていますが、どうなのでしょう。
日本での胆石は食生活の欧米化や、高齢化により増加してきていると言われていますが、最近10年間は、国内で詳しい疫学調査が行われておらず、直近の正確なデータは分からないようです。
Q5)胆石になるとどんな症状がでますか。
主な症状は腹痛、発熱、黄疸などですが、発熱がある場合、急性胆嚢炎の合併を疑い、黄疸がある場合、総胆管結石の合併を疑います。腹痛は最もよく出現する症状で、脂肪分の多い食事を食べたあとに、みぞおちから右の上腹部にかけておこる激しい発作性の痛みで、右肩や背中にも痛みが走ることがあり、吐いたりすることもあります。この腹痛は、胆石発作や胆道痛、胆道疝痛などとも呼ばれ、特徴的な痛みとされています。しかし、このような症状が全くでない患者も多く存在し、”無症状胆石”と呼ばれています。無症状胆石もずっと症状が無いわけではなく、年に2-4%の頻度で症状のある胆石症に変化しますので、安心はできません。
Q6)胆嚢結石が胆嚢癌の原因になるというのは本当でしょうか。
日本消化器病学会による胆石症診療ガイドラインでは、”胆嚢結石症が胆嚢癌の危険因子となる明らかな証拠はないが、胆嚢癌患者では胆嚢結石の合併が高率であると報告されている。”と述べられています。つまり、胆石が胆嚢癌の原因だと証明は出来ていないが、可能性は否定できないと言うところでしょうか。以前から、胆石保有者と非保有者を比較した研究では、胆石保有者で胆嚢癌の発生が高いとする報告がある一方、胆嚢結石を経過観察しても、胆嚢癌の発生はなかったとの報告もあり、胆嚢癌と胆石に関しては、まだ、はっきりとした結論は出ていないようです。
*さて、ここまでで、胆石とはどんな病気か 大まかにお話しました。明日は、胆石の検査、治療についてお話します。

健康診断で胆石があると言われたら その2

昨日は、胆石とはどんな病気かについてお話しました。
本日は、胆石が疑われたり、指摘された場合、どんな検査をしてどんな治療を行うかについてお話します。
Q7)それでは、胆石を診断するための検査について教えてください。
まず、腹痛や発熱、黄疸などの症状について、以前からの詳細な病歴の聞き取りを行ないます。その後、診察を行い、次に、肝機能、炎症反応、腫瘍マーカーなどの血液検査を行います。血液検査で肝機能異常がある場合、総胆管結石合併を見つけるきっかけになる事があります。
続いて画像診断を行いますが、最初に行うのはもちろん腹部エコーです。腹部エコーでは、ほとんどの胆嚢結石と一部の胆管結石の診断が可能です。胆石の大きさ、数などの情報が得られる他、胆嚢の壁が厚くなっていないかや、癌やポリープが合併していないかなど様々な情報が得られ、胆石を診断する上で最も重要な検査法と言えます。腹部単純X線検査も行いますが、胆石の石灰化の有無が確認できます。
その他、CTやMRI、排泄性胆道造影などの検査法があり、それぞれ有用な検査ですが、それらを組み合わせたり、応用したりした精密検査も日々進歩してきています。これらの検査は全て外来で行うことができ、手術を行う事になっても、以前のような術前の入院検査は現在では必要なくなりました。
Q8)胆嚢結石の治療法について教えてください。
症状のある胆嚢結石症に対する治療の原則は、胆嚢摘出術という胆石と胆嚢を取り除く手術を行います。昔はおなかを大きく切る開腹胆嚢摘出術が行われていましたが、最近はおなかに小さな穴を開けて腹腔鏡というカメラでおなかの中を見ながら胆嚢を取り除く、腹腔鏡下胆嚢摘出術が一般的に行われています。入院期間も1週間以内と僅かで、痛みも少ないため第一選択の手術法として普及しています。
手術以外の治療として、胆石が石灰化のない小さな石で、胆嚢の働きが保たれていれば、薬を使った経口胆石溶解療法や、体外衝撃波結石破砕療法が行われる場合があります。しかし、それらの治療法では治療効果に限界があり胆石消失の成功率はけっして高くはありませんし、胆嚢が残るため長期的には胆石再発の可能性もあります。
Q9)最後に、人間ドックや健康診断で胆石があると言われた場合に、どうすればいいのか、まとめていただけますか。
突然、検査で胆石があると言われた場合、まず、強い痛みがでるかもしれないとか、手術が必要になるかもしれないとか、連想して怖くなることが多いと思いますが、ここまででお話ししたように、必ずしも全員に症状がでるわけではありませんし、また、手術以外の治療法も色々あるわけです。
まず、専門医に相談する事をお勧めします。本やインターネットを使えば、一般的な胆石の診断・治療などを知る事ができますが、個々の状態に合わせた今後の治療方針を立てることは、意外に難しい場合が多いので、専門家の意見は大変参考になります。また、胆石は化膿性胆管炎などの命に関わる重篤な合併症を引き起こす場合もありますので、たかが“石”と侮ってはいけません。
さて、健康診断で発見された胆石の場合、症状のない無症状胆石であることが多いと思います。腹部エコーを用いて、胆嚢の壁の状態が詳細に観察できる場合には、胆嚢癌を合併しないか注意深く検査しながら経過観察を行うことができます。経過観察を行う場合、今後腹痛などの症状が出現する危険性は年に2-4%あり、それを事前に予測することは困難であること、症状が出てからでも、手術は安全に施行できますが、腹腔鏡下胆嚢摘出術がやりにくくなる場合があることをデメリットとして話しておく必要があります。十分説明をうけたあとで、将来の危険性を回避するため手術を希望された場合や、胆嚢の壁に異常を認めるか、または、胆嚢の壁の状態が十分観察出来ない場合には腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。もちろん、お薬を使った経口胆石溶解療法を希望された場合は、色々な条件を検討したうえで、可能かどうか決定します。
いずれにしても、検診で発見された胆石は症状が無い事が多いため、多くの場合、特別な治療を行わず、経過観察が可能です。本人の希望も治療法選択には大きな要素となります。専門医から十分説明を受けたうえで、自分が納得出来る最良の治療法を選択する事が重要となるでしょう。