ラジオホームドクター

診療科 出演者 放送日 テーマ
【県医師会】 岐阜県医師会副会長
川出 靖彦
7月2日
木曜日
かかりつけ医をもちましょう(1)
7月3日
金曜日
かかりつけ医をもちましょう(2)

かかりつけ医をもちましょう(1)(7月2日木曜日)
Q. = 司会 / A. = 川出

Q. 最近、病院や医院が経営困難になり倒産するところが出てきたり、病院や医院に勤めてくれる医師が不足して地方の医療体制が崩壊寸前であるといわれています。特に産婦人科や小児科の医師さらに最近は外科の医師も不足し救急医療やお産が危機的状況になっているといわれています。
今日は、こういった状況の中で、我々が病気になったとき困らないように賢く医者にかかる方法について、医者の立場からご意見をいただきたいと思いますのでよろしくお願いします。
A. わかりました。医師の立場から、医者にかかる方法、医者とのつきあい方について、お話しさせていただきますので、私の意見を参考に、上手に医者とつきあっていただけると幸いです。今回みなさんにお伝えしたいのは、
  1. 病院と町の開業医との役割の違いを覚えておいていただきたい。
  2. 病院と町の医者の上手な使い分けをしていただきたい。
  3. 病院や医院にかかる時、最低限守っていただきたいルールをお願いしたい。
  4. 医療は自分で選択する時代です。心やすく何でも言える、何でも頼める、自分に合った、かかりつけ医を見つける、見つけるだけでなく育てる必要がある、その方がみなさんにとって得であることを覚えていただきたい。
以上です。
Q. では、まずはじめに、病院と町の開業医との役割の違いとはどういうことでしょうか。
A. 町の開業医と病院にはそれぞれ役割分担があります。一言でいえば、病院は入院して検査や治療をするところ、町の開業医は通院して、治療するところです。
もう少し詳しく言いますと、
  1. 病院は、高度な、検査や治療機械を使って、専門的なチーム医療を行うところです。チーム医療というのは、様々な科の専門医師や看護師さん、栄養士さん、リハビリの先生などが協力して検査・治療に当たることです。
  2. 外来診療で判らなかったり、結論が出なかった病気の診断を確定したり、初期の治療や、症状が安定するまでの治療を行うところです。
  3. 「かかりつけの医師」と共同で患者さんを見てゆき、定期的に精密検査と診療を行います。
  4. 患者さんの急変したとき、迅速で適切な救急医療を行うところです。
こういったところが病院です。

町の開業医は、別の言い方をすると、かかりつけの医師と言った方が適切かと思いますので覚えておいてください。
さて、かかりつけの医師の外来診療は、
  1. 病気の予防・日常の健康管理やについて指導に助言をする
  2. 発病当初の初期診療や、日常の入院するほどではない軽い病気、すなわち風邪や腸炎などの一過性の急性の病気の治療や管理といった診療
  3. 高度な検査機器や高度先進医療を必要とするような病気、入院が必要な病気の場合、病院へ紹介したり検査の予約したりと言った病院への連携窓口
  4. 病院から退院し、症状の安定した慢性の病気の患者さんの治療・管理

  5. 最近は介護保険との関係から
  6. ケアマネージャーや地域包括支援センターとの連携
  7. 訪問看護センターとの連携
こういったことを行います。
Q. 次に、病院と町の医者、先ほどかかりつけの医師といわれましたが、かかりつけ医師との上手な使い分けとはどういうことですか。
A.
  1. 先ほど言いました本来かかりつけの医師が外来で診るべき病気、すなわち風邪のような軽い病気や診断治療方針が決まり安定した状態の慢性の病気の患者さんが大病院に行くと大病院の外来は大混雑、待ち時間も長くなります。
  2. また症状が出た最初から病院に行くと、受けるべき診療科を間違えたりして、無駄な時間やお金を費やすことになってしまう可能性があります。たとえば、皮膚にボロが出たと言うことで皮膚科にかかったら、内科の病気で出たボロだったといったことがよくあります。
  3. 病院にこういった患者さんが押し寄せると、高度で専門的診療が必要な患者さんに影響を与えてしまいます。待ち時間が長く、苦しんでいる患者さんがよけいえらくなってしまったり、急いでやりたい検査が遅れてしまったり、重傷で急がなければならない患者さんに迷惑がかかります。皆さんがその重症患者さんになったときのことを考えたら、病院の利用方法をよく考えていただきたいものです。
  4. また、病院のスタッフも、無駄な労力と時間を費やしてしうまうと、疲れてしまい、いざと言うとき力が発揮できません。病院の救急外来には重症で急を要する患者にかぎって受診することにして、医師・スタッフが入院患者に精力を注げるように使い分けていただきたい。

かかりつけ医をもちましょう(2)(7月3日金曜日)
Q. = 司会 / A. = 川出

Q. 昨日は病院と町の開業医の使い分けについてお聞きしました。引き続き今日もかかりつけの医師を持ちましょうをテーマにお話を伺います。
さて、病院や医院にかかる時、最低限守っていただきたいルールを教えてください。
A. まず第一にできるだけ時間内に受診しましょう。
診療には医師以外に多くのスタッフがかかわっています。医療関係者にも労働時間を超過しないように、疲れ果てないように心使いをしてやっていただきたいと思います。
スタッフがそろっている診療時間内に受診していただかないと検査も治療も、投薬も不十分になります。早めに受診しましょう。

二つ目は、診療時に持っていくと便利なものは、健康手帳、保険証、診察券、飲んでいる薬や薬の名前のわかるものです。

三つ目は、診察室で伝えたいこと、聞きたいことを、あらかじめメモしておくようにしましょう。
気になる症状は、「いつから」「どこが」「どのように」具合が悪いのか具体的に話してください。家族に同じような症状の方はいないかどうかも大切です。

四つ目に、今まで患った病気をもれなく伝達しましょう。
病歴は重要な情報です。これだけで6〜8割は診断がつくと言われています。上手に自分の過去について、現在の症状について伝えましょう。
  • 薬や注射による副作用の経験は必ず伝えること
  • 服用中の薬、市販薬、サプリメントもすべて話すこと
  • 過去に患った病気も出来るだけ正確に話すこと
  • 健康診断・他の医師の検査データーなども手渡すこと
Q. 昨日からの話をまとめてみますと、医療は自分で選択する時代ということで、心やすく何でも言える、何でも頼める、自分に合った、かかりつけ医を見つける、見つけるだけでなく育てる必要がある、その方がみなさんにとって得であることを覚えていただきたい、とのことですが、かかりつけ医を持つメリットとはどういった点なのでしょうか。
A. 外来で始めてみる患者さんの診察は大変むつかしいものです。日頃から知っている患者さんならば、家族の病気について、あるいはその患者さんの子供の時からの状態を知っているので、また健康な時の日頃の患者さんの状態を知っているので、一目瞭然、来院されたときの状態の異変に気づき、瞬時に診断が出来るのです。比較することが出来るならば、どんな藪医者でも、医者でなくてもかなり正確に状態変化をとらまえられるものです。逆に言えば、どんな名医でも、始めて診る患者さんの診断はそれほど簡単には、出来るものではありません。あれこれ聞いて、様々な検査を、実は余分と思われる検査でも、よく似た症状の現れる他の病気を否定しなければならないのでやらなければなりません。そうして、ようやく、診断確定が可能になるのです。
Q. 日頃から自分のことをよく知っている先生ならば安心で、そういう先生を身近に持つことがよいことと言うわけでしょうか?
A. おっしゃる通りです。かかりつけの、日頃から仲良くお付き合いをしている医師を作っておかれることが大切であると言うことではないでしょうか。

ただ、かかりつけの医師は町の開業医でも、病院の先生でも、それはどちらでもよいと思います。ただ、病院の先生は、若い先生ですと勤務先を何年かすると替わってしまわれることがしばしばです。なかなか親密につきあうことが出来ません。理想は、自分の住んでおられるところのなるべく近くで、家族ぐるみのお付き合いも可能な、身近な先生を探されるのがよいかと思います。出来れば、あまり狭い専門科に特化された先生ではなく、家庭医としていろんな病気について相談できる科目の先生がよいと思います。誰でも友達とするには性格の一致不一致があり、どうしても好きになれない相手があります。医者だって同じでしょうから、友達付き合いができるような、性格がお互いに合う者同士を探されることが大切です。

そんな先生が見つかったら、もし何かその先生の専門でない病気が起こっても、たとえ専門でも、病院で精密検査を受けたいから紹介してくれとたのんで、必ずその先生の紹介状をもらってかかられることがよいと思います。そうすると、紹介された先生も、医者からの紹介だと、いい加減には出来ません、何故かと言いますと、いい加減な診察をして、いい加減な返事を書いていては、医者同士ならすぐ見破ってしますから、医者同士の信頼と信用がなくなってしまいますから、慎重にかつ丁寧に見てくれると思います。

また紹介先の先生から返事をいただいてかかりつけ医に診てもらえば、よく解らなかった紹介先の先生の言葉も解説してもらえるし、その結果を、病歴として管理してもらうと、次に何か起こったときの参考になるというわけです。おわかりいただけたでしょうか。

最後にもう一度まとめます。
医療は、皆さん自らが選択する時代です。最善の医療を受けるためには、
  • かかりつけの医師とする先生の情報を集める(口こみ・経験)
  • 自宅や勤務先の近くにある
  • あなたにあった医師をみつける
  • 主治医として、その医師としっかりつき合う
  • 健康情報をその医師に集中して手渡して蓄積してもらう
こうしてあなたのかかりつけの医師をあなた自身が育てると安心して暮らせるのではないでしょうか。
Q. ありがとうございました。みなさん、何とか自分にあった、よいかかりつけ医を何とか探しましょう。
今日はありがとうございました。