ラジオホームドクター

診療科 出演者 放送日 テーマ
【内科】 川出医院
川出 靖彦
(かわで やすひこ)
7月7日
木曜日
「かかりつけ医」見つけよう(1)
7月8日
金曜日
「かかりつけ医」見つけよう(2)

「かかりつけ医」見つけよう(1)

まず始めに、今年4 月から、大きい病院、これは200 床以上の病院に初めての病気でかかると選定医療費という名目の5400 円のお金が徴収されることが法律で定められました。ご存じでしたか?
紹介状を持って来られた方からは徴収しないことになっています。このようになった理由・根拠についてまずお話ししようと思います。かかりつけ医を見つけましょうと言う今日のテーマと深い関係がありますので、このことから、お話ししたいと思います。

平成4 年の法律の改正により、医療施設はその規模や特質に応じて機能分担をすることが推進されました。「初期の診療は地域の医院・診療所で、高度・専門医療は200 床以上の病院で」行うことを目的に施行された法改正です。「200 床以上の病院」を訪れる患者さんは、特別な医療を求めていると考えられるから、「選定療養費」を支払いなさいと言うものです。
病気になったら、まずかかりつけ医にかかって診てもらい、診断治療を受けなさいと言うことです。ただし、かかりつけ医が診察した結果、大きい病院の精密機械を使って調べないと分からないとか、あるいは専門医に診てもらって意見を伺った方が良いと判断を下した場合には、かかりつけ医の紹介状を持って病院に行ってくださって結構です。その時は、必要があって病院にかかるのですから選定療養費は払う必要ありませんと言うことなのです。大病院に誰も彼もが殺到し、病院本来の高度な医療を必要としている方、高度診断機器を使った精密検査が必要な方達の診療が妨げられないようにと言う配慮から作られた制度で、これが機能分担という意味です。

機能分担の一方の医師すなわち初診で診る医師はどういった人なのでしょう。これがかかりつけ医です。
さてそれでは「かかりつけ医」ってどんな医者なのでしょうか?いつも診てもらっている「かかりつけの医者」とは違うのでしょうか?
今日は、皆さん自身のための「かかりつけ医」さがしと、「かかりつけ医」に決めた医師が、皆さんにとって理想のよりすばらしい「かかりつけ医」になってもらう方法について、私の意見をお話しようと思います。

A)かかりつけ医とは どういった先生のことを言っている?

  1. あなたの健康状態や病気の管理・監視役です。
  2. 日頃から付き合い、気心知れていて、遠慮無く話が出来る
  3. 病気になればまず最初に診てもらい、相談する先生
    (この先生で、ほとんどは診断治療可能、ただ専門的な診断や治療が必要な時、あるいは高度診断機器による検査が必要時専門医に紹介)
  4. 健康状態や過去にかかった病気を知っている(患者さんの病歴が分かっている)
  5. 服用薬は、すべて(他医の薬も)知っている(患者さんが情報提供する必要あり)
  6. 検査も、検診や他院のデータを活用し“ムダ”な重複を避ける監視をしてくれる
  7. 家族・環境・近隣との関係もわかっている
  8. 専門医・病院と連携し、紹介状を書き、予約も気楽にしてくれる
  9. 往診・看取り(癌、終末期)や24 時間対応してくれる
  10. 医療と介護が必要になったとき、多職種の方との協働が出来る協調性のある人

B)「かかりつけ医」として選択する医師はどんな資質の先生が良いか

  1. 患者さんに向き合う姿勢を持っている医師:
    患者さんが何を望んで来院されたかよくわかり、患者さんを取り巻く状況やそれぞれの人生観にも気配りして医療を行ってくれる医師。
  2. 病気に向き合う真摯な医師:
    最新の医学を学び実践する態度、検査もよく熟慮し選択し、一人で抱え込まず他の専門を紹介してくれる医師。他の医療機関やドック・健診データにも目を光らせ、広く全身状態を知ろうと努力してくれる医師
  3. 他の医療介護職の方との連携を大切と考えている医師:
    高齢で不自由な生活を送らなければならないような、介護を必要とする状況になったとき、介護支援を担っている様々な職種の方や施設に対し、進んで相談し協力してくれる、また患者さんの意見も聞いてくれるオープンで協調精神のある性格の医師

C)「かかりつけ医」を持つと、どのようなメリットがあるか

  1. 自分をよく知ってもらうと誤診が減り、医療による危険も減る:
    自分と自分を取り巻く健康・病気・薬による薬害、アレルギー反応などの病歴がわかっていると、新しい病気が出ても診断・治療の成功確率は高く、治療による薬の害も回避できる。
  2. 専門医や病院へ紹介する場合の選択:
    専門医の診察が必要になったとき、紹介状(診療情報提供書)を書いてもらって専門医を受診しなければなりません。その際、かかりつけ医は紹介先の病院や専門医を、単に機械的に選んでいるわけではないのです。病気の見立てについてばかりでなく、患者さんとその医師との相性なども考えて選択します。そのような配慮は、患者さんのことをよくわかっていないと出来ません。日頃からのつきあいが大変重要と思います。
  3. 紹介先からの返答の解説:
    病院で検査を受け、返事をもらってこられたとき、よく耳にするのは、病院での説明がよくわからなかった、詳しく話してもらえなかったと言う言葉です。その返書の中身の詳しい説明、かみ砕いたわかりやすい解説をするのが「かかりつけ医」の重要な役割です。又その結果は、新しい病歴として「かかりつけ医」の記憶・記録の中に加えられ、次の病気発生時に役立つことになります。

かかりつけ医を持ちましょう(2)

D)「かかりつけ医」を選ぶ最初の行動と条件

  1. 最初の選択:
    まずは、身近な所で、評判の良い・見立もよい・やさしい・親身になって話を聞いて 相談に乗ってくれると言う医者を探すことです。検査・料金・投薬が納得できるとか、受付・看護師も親切で気配りがあり、スタッフの入れ替わりもあまりないと言ったことも判断の基準にされると良いと思います。
  2. 簡単で、確かで、確率の高い安全な方法:
    まず第一は口コミと思います。親しい友人知人に評判を聞いて教えてもらうことです。しかし、その医師と自分との間に生ずる相性は、必ずしも紹介してくれた方と医師との間に出来ている関係と同じとは限らないので注意が必要です。
  3. 何科のどんな先生が良いか:
    まずは、「群盲象を評す」に陥らない、「専門バカ」「木を見て森を見ず」に陥りやすいような、あまり狭い専門領域の先生よりは、広い領域を診ることが出来る医師を選びましょう。
  4. インターネットを利用した医師情報集め:
    最近若い人は、インターネットで調べて、医者を探される方が多い様ですが、インターネット情報は、時に自己宣伝や、意図的な中傷誹謗が混じっていて、正しい情報、的を得た情報を手に入れるには十分な吟味が必要ですのでご注意ください。

さて、これだけの条件を満したからといって、「かかりつけ医」に値する医師とは言えません。さらにどんな条件をクリアーすべきでしょうか。

E)より信頼でき、たよれる「かかりつけ医」になってもらうには

  1. 日頃から親しくお付きあいする:
    医師も人間です、日頃からのつきあいで、患者さんに対する態度・真剣さが、異なってくると思います。「かかりつけ医」としての日頃から付き合い、親密度が高いほど、診察や相談を安心してたのめます。
  2. 「かかりつけ医」にはあなたに関する様々な情報を知っていてもらう:
    実は、初めて会う患者さんの病気を、的確に診断し治療することは難しいことです。患者さんの身体的異常のみならず、精神状態・環境、人生哲学など人物全体の置かれた状況から判断するとより良い診断治療が可能になります。また過去の病気、現在の病気の経過も重要です。この病気の歴史をよく知っているならば、検査も少なく済ませることも可能で、お金もかからず、正確な診断に至ることが可能となります。こんな統計があります。患者さんの過去の病気、家族の健康、遺伝、環境などその患者さんの状況や現在の病状がわかっていると、それだけで病気は 60〜80%もの高い確立で診断できるとのことです。
    また、他の患者さんのことを考えると、外来診察で上に書いたような色々のことを、時間かけゆっくり聞くことは困難です。少しずつ、医師に自分の情報は教えておくことが大切です。
  3. 医院以外の場所での接点を求める:
    患者と医師と言う関係以外の接点も必要と思います。地域ぐるみでの活動、すなわち町内会、自治会、市民の会などの場に地域の医師をさそい出し、住民の皆さんと一緒に過ごす時間を作る、あるいは講演をしてもらう。お互いが顔見知りになると、その地域の患者さんのために働いてくれる、頼りになる医師「かかりつけ医」を探すお手伝いになります。またその医師と知り合いになることで、否応なしに「かかりつけ医」として理想の医師へと医師の方も変化してゆき、育ってゆくことになると思いませんか。
  4. 地域に医師を誘い出す方法は医師会を利用する:
    医師会に地域の医師を講演会の講師として紹介してもらう、医師会と共同企画で地域の医師が参加する企画を立てると言った医師会を活用する方法は、個人任せより積極的で良い方法だと思います。
    日本医師会は平成28 年4月より、「日医かかりつけ医機能研修制度」を実施することになりました。「かかりつけ医機能」とは、上記のようなことを実践出来る医師とのことです。これは地域ぐるみで「かかりつけ医」を育てようとする活動を後押しする、まさに打ってつけの制度と言えます。今まで以上に医師会が協力してくれることが期待されます。積極的に働きかけてください。